vol.7 Lewy小体型認知症(DLB)

 今回は、Lewy小体型認知症(DLB)を扱う。

 

 Lewy小体型認知症(DLB)は、老年期に発症し、進行性の認知機能障害とともに幻視などの特有の精神症状とパーキンソニズムを呈する神経変性疾患である。近年、疾患の認識の広がりに伴い、有病率の高さが明らかとなり、注目されている。Alzheimer型認知症、血管性認知症とともに三大認知症の1つである。

 

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Key Word

 進行性で変動する認知機能障害、幻視

 パーキンソニズム、REM睡眠行動異常

 SPECT、PET:後頭葉の血流低下

 

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80歳の男性。夜間に大声をあげることを主訴に来院した。約10年前から時々はっきりした夢をみて、夜中に大声をあげるようになった。1年前から動作がのろくなり、歩行時に歩幅が小刻みとなって、つまずくことが増えてきた。2か月前から、カーテンが人の姿に見えることがあったという。さらに、夜中に大声をあげて手足を動かしてベッド周囲の物を落とすことが増えてきたため、心配した妻に勧められて受診した。既往歴に特記すべきことはなく、常用薬はない。頭部MRIでは軽度の脳萎縮以外に異常は認めない。

診断に有用な検査はどれか。3つ選べ。

a 脳脊髄液検査
b 末梢神経伝導検査
c ポリソムノグラフィ
d MIBG心筋シンチグラフィ
ドパミントランスポーターSPECT

 

解説

 1年前から動作緩慢、小刻み歩行 →パーキンソニズム

 カーテンが人の姿に見える →幻視

 夜中に大声をあげて手足を動かす →REM睡眠行動異常

 頭部MRI:軽度の脳萎縮 ⇒診断:Lewy小体型認知症
解答:c,d,e
 c REM睡眠行動異常があるため。
 d MIBGの取り込み低下がみられる。
 e 大脳基底核の取り込み低下がみられる。

 

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72歳の女性。幻視を主訴に長女に伴われて受診した。1週前に「家に来ていた孫が急にいなくなった」と長女に電話した。長女によれば孫が来ているはずはないが「朝起きて居間に行くと、孫が黙って座っている姿が見えた。一生懸命勉強をしているようなので声をかけずにそっとしておいた。孫が家の中を歩いているのを見たが、こちらから呼ぶといなくなっていた」と述べた。数年前から長女の家に泊まった際に、夜中に寝言を言ったり笑ったりするのに気付かれていた。本人は「夢を見ていた」と述べることが多かった。半年ほど前から動作の緩慢が目立つようになっていたという。問診時の感情表出は自然であり礼節は保たれ、時間や場所の見当識に問題はなかった。血液検査と脳波検査とに異常を認めない。頭部MRIでは軽度の脳萎縮を認める以外に異常所見は認めない。

考えられるのはどれか。

a 妄想性障害
b 血管性認知症
c 前頭側頭型認知症
d Lewy小体型認知症
e Alzheimer型認知症

 

解説

 幻視を主訴に受診、半年前から動作緩慢、夜中に寝言

 頭部MRI:軽度の脳萎縮 ⇒診断:Lewy小体型認知症
解答:d

 

113A58
72歳の男性。幻視を主訴に来院した。1年前から睡眠中に怒鳴ったり、布団を蹴って足をバタバタしていると妻に指摘されるようになった。このころから時々立ちくらみを自覚していた。半年前から徐々に食事や着替えの動作が遅くなった。1か月前から夜中に「部屋の中で見知らぬ人が踊っている」と訴えるようになったため、家族に付き添われて受診した。喫煙は10本/日、飲酒はビール350mL/日。意識は清明。身長163cm、体重56kg。体温36.4℃。脈拍68/分、整。血圧158/86mmHg。呼吸数16/分。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。改訂長谷川式簡易知能評価スケール23点(30点満点)、Mini-Mental State Examination〈MMSE〉25点(30点満点)。脳神経に異常を認めない。四肢で左右対称性に軽度の筋強剛を認める。腱反射は正常で、運動麻痺、感覚障害および運動失調を認めない。姿勢は前かがみで歩行は小刻みである。尿所見に異常を認めない。血液所見:赤血球342万、Hb 10.7g/dL、Ht 32%、白血球8,300、血小板14万。血液生化学所見:総蛋白7.4g/dL、アルブミン3.8g/dL、総ビリルビン0.9mg/dL、AST 42U/L、ALT 48U/L、LD 354U/L(基準176~353)、γ-GTP 56U/L(基準8~50)、アンモニア32μg/dL(基準18~48)、尿素窒素17mg/dL、クレアチニン0.9mg/dL、血糖112mg/dL、Na 140mEq/L、K 4.4mEq/L、Cl 104mEq/L。CRP 0.3mg/dL。

診断に最も有用なのはどれか。

a 血中CK
b 頭部MRI
c 脳脊髄液検査
d 脳血流SPECT
e 腹部超音波検査


解説

 幻視を主訴に来院

 1年前から睡眠中に怒鳴る・足をバタバタ →REM睡眠行動異常

 半年前から食事や着替えの動作が遅くなった →動作緩慢

 四肢で左右対称性に軽度の筋強剛、前かがみ・小刻み歩行

 ⇒診断:Lewy小体型認知症

解答:d

 脳血流SPECTで後頭葉優位な血流低下がみられるはず。

 

~Today's proverb~

 Failure teaches success. 「失敗は成功のもと」