vol.6 Parkinson病

 今回は、神経変性疾患の1つであるParkinson病を扱う。

 

 Parkinson病は、黒質の細胞が変性することにより、ドパミン産生が低下し、スムーズに体を動かせなくなる神経変性疾患である。安静時振戦、無動、筋強剛、姿勢保持障害が四大症状である。

 

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Key Word

 動作緩慢、安静時振戦

 表情の変化が乏しくなる(仮面様顔貌

 前傾姿勢となり、転びやすくなる

 便秘、排尿障害、起立性低血圧(自律神経障害)

 

 

111A45

72歳の女性。右手が使いにくいことを主訴に来院した。3年前から料理のときに右手で炒めものをかき混ぜづらく、歩行時に右足を引きずると感じていたが、症状の進行は自覚しなかった。半年前、物を持って平地を歩いているときに小走りになって転倒した。そのころから徐々に右足の引きずりが強くなっているように感じている。10年前から便秘で5年前から嗅覚の低下を自覚している。3年前に夫と死別してから抑うつ傾向となり、選択的セロトニン再取り込み阻害薬SSRI〉を服用している。半年前に娘と旅行をしたとき、睡眠中に寝言を言いながら手足をバタバタさせていたという。表情は乏しいが、眼球運動は正常で眼振は認めない。右優位の筋強剛と無動を認めるが、振戦を認めない。四肢の腱反射は正常で、Babinski徴候は認めない。ドパミントランスポーターSPECTを別に示す。

 

 

最も考えられるのはどれか。

a Parkinson病

b 正常圧水頭症

c 多系統萎縮症

d 進行性核上性麻痺

e 薬剤性Parkinson症候群

 

解説

 小走りになって転倒 →歩行障害(加速歩行)

 10年前から便秘、嗅覚の低下、抑うつ、REM睡眠行動異常

 表情が乏しい →仮面様顔貌

 ドパミントランスポーターSPECTで取り込み低下 ⇒診断:Parkinson病
解答:a

 

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72歳の男性。手のふるえと動きにくさとを主訴に来院した。1年前から左手がふるえるようになった。2か月前から歩行が不安定になり、歩幅が狭くなったという。顔面筋の動きに乏しい。安静状態で左手が規則的にふるえる。四肢に強い筋強剛があり、特に左側で顕著である。筋力に異常を認めない。感覚障害を認めない。腱反射に異常はなく、病的反射を認めない。
治療薬として適切なのはどれか。2つ選べ。
バルプロ酸
スルピリド
c エンタカポン
ハロペリドール
e レボドパ〈L-dopa〉

 

解説

 2か月前から歩行が不安定

 安静状態で手が震える →安静時振戦

 四肢に強い筋強剛 ⇒診断:Parkinson病
解答:c,e

 

~Today's proverb~

 All is well that ends well. 「終わり良ければすべて良し」