vol.9 家族性アミロイドポリニューロパチー(FAP)

 今回は、末梢神経障害の1つである家族性アミロイドポリニューロパチー(FAP)を扱う。

 

 家族性アミロイドポリニューロパチー(FAP)は、末梢神経、心臓、腎臓、消化管、眼などにアミロイドが沈着し、成人期にニューロパチーや臓器障害を起こす遺伝性疾患である(常染色体優性遺伝が多い)。遺伝子異常により肝臓でトランスサイレチンが合成され、これが重合してアミロイドとなり組織に沈着する。予後は不良で、治療には肝移植が有効である。

 

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Key Word

 下痢・便秘を繰り返す、起立性低血圧(自律神経障害)

 血液検査:血清中に異常蛋白(異型トランスサイレチン

 Congo red 染色陽性のアミロイド沈着

 

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46歳の男性。手足のしびれと脱力とを主訴に来院した。32歳ころから両足趾にピリピリ感があり、便秘と下痢とを繰り返すようになった。39歳の時に湯たんぽで両足に熱傷を負ったが、熱さや痛みをほとんど感じず、このころから勃起障害を認めている。40歳ころから徐々に両下肢に力が入りにくく歩行が困難となり、手指の筋萎縮と感覚障害も進行している。最近は立つと失神することが多くなり、手足には暑い日でも汗をかかない。母親と兄とに同様の症状を認める。
正しいのはどれか。2つ選べ。
a 伴性劣性遺伝する。
b 進行すると認知症を呈する。
c 血清中に異常蛋白を認める。
血漿交換が有効である。
e 肝移植が有効である。

 

解説

 便秘と下痢を繰り返す、勃起障害、起立性低血圧 →自律神経障害

 手足のしびれ、熱さや痛みを感じない →感覚障害

 母と兄とに同様の症状 →何らかの遺伝性疾患

 ⇒診断:家族性アミロイドポリニューロパチー
解答:c,e

 

~Today's proverb~

 Seeing is believing. 「百聞は一見に如かず」