vol.3 Alzheimer型認知症

 今回は、Alzheimer型認知症を扱う。

 

 Alzheimer型認知症は、認知症を主体とし、肉眼的に大脳の全般的な萎縮、組織学的に老人斑、神経原線維変化の出現を特徴とする神経変性疾患である。認知症の中で最も多い65歳未満で発病した場合をAIzheimer病、65歳以上で発病した場合をAIzheimer型老年認知症とよび分けることがあり、総称はAIzheimer型認知症となる。単にAIzheimer病とよぶことも多い。

 

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Key Word

 物忘れ(記憶障害)、思考障害(物盗られ妄想)、海馬の萎縮

 

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76歳の女性。物忘れが多くなり、何度も同じことを尋ねるようになったことを心配した家族に付き添われて来院した。約1年前から軽度の意欲低下がみられていたが、ここ3か月間は食事を作るものの同じ献立を何日も連続して作るようになってきたという。身体所見に異常を認めない。Hamiltonうつ病評価尺度4点(0点〜7点:正常)、Mini-Mental State Examination〈MMSE〉16点(30点満点)。頭部MRIで海馬の軽度萎縮が認められた。

この患者の機能評価に有用な検査はどれか。2つ選べ。

a Rorschachテスト
b 津守・稲毛式発達検査
前頭葉機能検査〈FAB〉
d 状態特性不安検査〈STAI〉
e Wechsler記憶検査〈WMS-R〉

 

解説

 物忘れ、MMSE 16点

 頭部MRIで海馬の萎縮 ⇒診断:Alzheimer型認知症
解答:c,e

 c:意欲低下があることから前頭葉機能の低下を疑う。

 e:記憶障害の診断に有用な検査。

 

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Alzheimer型認知症でみられるのはどれか。

a 身体失認
b 感覚性失語
c 肢節運動失行
半側空間無視
遂行機能障害


解答:e

 

110D41
75歳の女性。物忘れを主訴に夫に連れられて来院した。2年前から物忘れが目立つようになり、何度も同じことを尋ねるようになった。買い物で同じ物を買ってくることがあり、そのことを指摘しても適当にはぐらかすようになった。また料理も簡単なものしか作らなくなり、心配した夫に連れられて受診した。大学卒業後、市役所に勤務し、60歳で定年退職した。その後、地域の婦人会活動を活発に行っていたが、最近は外出することがほとんどない。既往歴に特記すべきことはない。診察時、疎通性は比較的良好であるが、時間と場所の見当識障害がみられる。改訂長谷川式簡易知能評価スケールは11点(30点満点)である。その他の神経学的所見に異常を認めない。血液生化学所見に異常を認めない。頭部MRIで両側海馬の萎縮を認める。
この患者に対する治療薬として適切なのはどれか。
ドパミン受容体遮断薬
アセチルコリン受容体遮断薬
アセチルコリンエステラーゼ阻害薬
選択的セロトニン再取り込み阻害薬SSRI
セロトニンノルアドレナリン再取り込み阻害薬〈SNRI

 

解説

 物忘れ、時間と場所の見当識障害

 改訂長谷川式簡易知能評価スケール 11点、頭部MRIで両側海馬の萎縮

 ⇒診断:Alzheimer型認知症
解答:c

 

~Today's proverb~

 No pain, no gain. 「虎穴に入らずんば虎子を得ず」